消費社会に抗うには何が必要か——朝活の対話を通じて、SNSや広告に流されず自分らしい時間とお金の使い方を取り戻すヒントが見えてきました。比べることをやめ、作ること・表現することに集中する。その先に、本当の豊かさがあるのかもしれません。
「なんか暇」なのに満たされない——消費社会という仕組み
今回のテーマを提案してくださったのは工藤さん。きっかけは「暇の論理学」という本との出会いでした。やることはある、やりたいことも見たいものもある。でもなぜか満たされない。その感覚が、どうやら自分だけのものではないと気づいたそうです。
「社会がそういう仕組みになっているから、自然とそう考えてしまう」と言います。SNSを開けば誰かの美味しそうなご飯、楽しそうな旅行。動画を見ては「あ、これいいな」と思う。それ自体は悪いことではないけれど、なんとなく消費し続けているのに、何も残らないという感覚が積み重なっていく。「じゃあ、これをどうしていけばいいんだろう」——そんな問いからこの日のテーマは始まりました。
趣味さえも「商業ベース」に巻き込まれていく
参加者から、とても鋭い指摘が出ました。昔は個人の趣味として完結していたもの——おしゃれなカフェに行く、美味しいお菓子を作る——が、今ではSNSや収益化と結びついてしまっている、というものです。
「別にお金を稼ぐことが悪いわけではない。でも、全部が商業ベースになってきて、ガツガツしていないものがなくなってきた気がする」。趣味の世界にも「上手い・下手」「優れている・劣っている」という序列が生まれ、比べることが当たり前になってしまっている。自己満足でやりたいのに、気づかないうちに他者の視線が入り込んでくる。
楽器を趣味にしている参加者は「上手い人の動画を見ないようにしている」と話してくれました。見てしまうと「まだ1年なのに、この人のほうが上手い」と思ってしまって、純粋に楽しめなくなるからと。消費社会の圧力に対する、ひとつの小さくて確かな実践です。
「作ること」「表現すること」は消費とは違う
では、消費社会に抗うにはどうすればいいのか。対話の中で自然と浮かび上がってきたキーワードが、「作ること・表現すること」でした。
「何かを作っているとき、人は目の前のことしか考えていない」という言葉がありました。演奏する、描く、料理する——そういう行為の中では、比べる余地がない。ただその時間と向き合っているだけで、その瞬間に消費とはまったく異なる充実感が生まれる、という体験談でした。
「ショート動画を10本見ても1本しか覚えていない。でも練習すれば、昨日できなかったことが今日できるようになる」という対比も印象的でした。自分の中に蓄積されるものがあるかどうかが、消費と生産を分ける一つの基準になりそうです。インプットよりアウトプットのほうがエネルギーが要るから、つい楽な方に逃げてしまう——でも、それと知った上で「作る時間」を意識的につくることが、消費社会に抗う第一歩かもしれません。
「自分を喜ばせること」を知っておく
消費社会の中で流されにくくなるための方法として、「自分を喜ばせることを知っておく」という視点も出てきました。
旅行を例に挙げてくれた参加者がいました。「いいホテルに泊まることへの憧れを持たされている気がするけど、私は現地の人と話したり、地元のお店を歩き回ったりする方が喜びを感じると分かってきた」と。だから高級ホテルにはそれほどお金をかけなくていい、と自然に思えるようになったそうです。
こうした「自分の価値観のデータ」は、10年ほどかけてじわじわと積み上がっていくもの。若いうちに「これは違った」という経験をいっぱいしておくことが、将来の無駄な消費を減らす投資になる、という言葉に深くうなずきました。失敗消費を「お勉強だった」と笑えるくらいのゆとりを持てると、消費社会との付き合い方がずいぶん変わってくる気がします。
マーケティングの仕組みを知ることが、消費社会に抗う知識になる
広告やマーケティングは「あなたにはまだ足りないものがある」というメッセージを巧みに送り続けます。そのニーズを呼び起こされ、お金を使い、また働く——という循環の中に、気づかないうちに組み込まれてしまう。消費社会の構造を理解することが、消費に抗うための知識になります。
「マーケティングの入門書を1冊読むだけで、あ、仕掛けられていたんだと気づける」という体験談がありました。仕組みを知ると「これは今、乗せられているな」と少し立ち止まれる。自分が乗るか、乗せられるかの違いを意識できるようになる、ということです。
インフルエンサーやテレビ紹介は「広告っぽくない」から、共感ベースでつい欲しくなってしまう、という正直な声もありました。仕組みを知っていても完全には防げない。でも、知っていることで「考える余地」が生まれる。それで十分かもしれません。
消費社会に抗うヒントをくれる2つの作品
この日の対話では、2つの作品が話題に上がりました。
ひとつは漫画「路傍のフジイ」。40歳、非正規雇用、特に専門スキルもない藤井さんが主人公。周りからは「やばい」と思われているけれど、本人は周りと比べない。自分の好きや嫌い、興味関心に純粋に向き合っている。ギターも絵もへたくそだけど、本当に楽しんでやっている。そんな藤井さんの周りに、気づけば人が集まってくる——という物語です。比べないことの力を、藤井さんという存在が体現しています。
もうひとつは「世界の果てのカフェ」(全世界500万部)。人生に行き詰まりを感じた主人公が迷い込んだカフェで、「あなたはなぜここにいるの?」「今日死んでも幸せ?」という問いを投げかけられます。哲学的な問いを通じて、本当にやりたいことが見えてくるという小説。今日のテーマと深くリンクする内容で、参加者から「読んでみます」という声が続きました。
消費社会に抗うとは「自分が主語になること」
今日の対話を通じて見えてきたのは、消費社会に抗うとは「何も買わない・何も見ない」ということではなく、「自分が主語になっているかどうか」を確認し続けることなのかもしれない、ということでした。
広告がきっかけで興味を持ったとしても、本当に自分がやりたいと思うならそれはいい消費。でも、特に欲しいわけでもないのに焦りや比較心から動いてしまうなら、それは自分を消耗させることになる。「自分を消費していないか、むしろ増やしているか」という問いを持っておくだけで、日々の選択が少しずつ変わっていきそうです。
テーマを提案してくれた工藤さんは「解決の糸口が見えた」と話してくれました。珍しいことだそうで、参加者みんなで少し笑いました。答えのない問いで終わることもある中で、今日の対話では「作ること・知ること・自分の価値観を育てること」という具体的な道筋が浮かび上がりました。消費社会とうまく付き合いながら、それぞれのペースで自分らしい時間を作っていけたらいいですね。

