人生は「計画」か「偶然」か?不確実な未来の歩き方。 (2025/10/25)

この記事の目次

「将来のためにしっかりキャリアプランを立てなきゃ」と焦る一方で、「目の前のことに一生懸命になっていたら、いつの間にか道が開けていた」という経験はありませんか?

今回の朝活・哲学カフェのテーマは、ずばり「計画性と偶然性」

「人生を計画通りに進めること」と「偶然の出会いや出来事に身を任せること」。
果たしてどちらが幸せに近いのでしょうか?あるいは、AIが台頭し変化の激しいこの時代において、私たちはどうバランスを取ればいいのでしょうか。

MBTI(性格診断)の話題から、キャリア理論の金字塔「計画された偶発性」、そして具体的な人生のエピソードまで。参加者の皆さんと白熱した対話の模様をお届けします。

 

1. MBTIで見る「計画派」vs「偶然派」

対話の冒頭、アイスブレイクとして盛り上がったのがMBTI(性格診断)の話題でした。
MBTIには、物事へのアプローチ方法として以下の2つの指標があります。

  • J(Judging/判断的): 計画を立て、体系的に進めることを好む
  • P(Perceiving/知覚的): 臨機応変で、その場の状況に合わせることを好む

「皆さんは、自分の人生を計画的に進めていますか? それとも偶発的なきっかけに影響されていますか?」

この問いに対し、会場では興味深い傾向が見られました。
細かいタスク管理や日常業務においては「計画的(J的)」に動く人が多い一方で、「人生単位の大きな決断」においては「偶然(P的)」な要素が大きいと感じている人が多かったのです。

旅行のスタイルに現れる「生き方のスタンス」

計画性と偶然性の違いが最も顕著に現れたのが、「旅行」のエピソードでした。

「私はテーマパークに行く時、事前に下見をしたくなるくらい計画します。オフィシャルホテルからのバス乗り場や避難経路まで把握しておかないと不安で楽しめないんです。」(参加者Aさん)

「逆に私は、現地に行ってから『あ、ここ面白そう』と決めるタイプ。計画通りすぎると、新しい景色に出会うチャンスをシャットアウトしてしまう気がして。」(参加者Bさん)

この対比は、まさに人生観の縮図のようです。
「不測の事態に備えることで安心を得る」スタイルと、「余白を残すことで新しい可能性を呼び込む」スタイル。
どちらが良い・悪いではなく、自分にとって心地よいバランスを知ることが、自己理解の第一歩なのかもしれません。

 

2. キャリアの8割は「偶然」で決まる?

対話の中でキーワードとして挙がったのが、スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授が提唱した「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」です。

この理論の骨子は以下の通りです。

  • 個人のキャリアの8割は、予想しない偶発的な出来事によって形成される。
  • その偶然をただ待つのではなく、自ら行動することで「好ましい偶然」を引き寄せることができる。

参加者の中にも、この理論を地で行くようなエピソードを持つ方がいらっしゃいました。

「やりたくないこと」が教えてくれる指針

ある参加者は、かつて「鉄道工事」の現場監督をしていた際のエピソードを語ってくれました。

「昔から鉄道が好きで、計画通りその職に就いたんです。でも、実際にやってみたら過酷極まりなくて(笑)。そこで初めて『自分は鉄道そのものよりも、モノづくりのプロセスが好きだったんだ』と気づき、今の建築系のキャリアに方向転換しました。」

この話から得られた気づきは、「計画通りにいかなかった(=失敗した)経験こそが、本当に自分に合う道を教えてくれる」ということです。

最初から完璧な正解へのルートを描こうとせず、
「とりあえずやってみる」→「違和感を感じる(やりたくないことを知る)」→「軌道修正する」
というプロセス自体が、結果として独自のキャリアを形成していくのです。

逆算思考の落とし穴

「何歳までに結婚して、何歳で役職について…」といった逆算型のキャリアプランについても議論になりました。

もちろん、企業の目標達成などにおいては逆算思考は不可欠です。
しかし、個人の人生においてガチガチにゴールを固定してしまうと、「イタリアに行ってみたら意外と楽しかったから住んじゃおう」といったような、想定外のハッピーな展開(セレンディピティ)を排除してしまうリスクもあります。

「ゴールは毎日設定し直してもいい」

そんな柔軟な言葉も飛び出し、参加者の皆さんの肩の力が少し抜けたような瞬間でした。

 

3. AI・不確実な時代における「計画性と偶然性」

話題は現代社会、特にAIの台頭や働き方の変化にも及びました。

「かつて事務職やオペレーターは安泰だと言われていたけれど、AIの登場で状況は一変しました。10年前に立てた計画が、今はもう通用しないことも多いですよね。」

このように、外部環境が激しく変化する時代において、「計画」の持つ意味も変わりつつあります。

「アドリブ力」という最強の計画

では、計画は無意味なのでしょうか? 結論は「No」です。
参加者全員が納得したのが、「知識や経験を蓄えることは、最高の計画である」という視点でした。

たとえ予測不可能なトラブル(=偶然)が起きたとしても、過去に多様な経験(=点)を持っていれば、それらを繋ぎ合わせて解決策(=線)を導き出すことができます。
これをある参加者は「アドリブ力」と表現しました。

  • 計画通りに進める力も大切。
  • しかし、計画が崩れた時に「じゃあ、こっちの道も面白そうじゃない?」と切り替えられる知識の引き出しとメンタリティこそが、これからの時代の安定に繋がる。

変化を恐れて計画にしがみつくのではなく、「変化に対応できる自分」を育てておくこと。それこそが、AI時代における真の「計画性」なのかもしれません。

 

4. まとめ:直感で選び、論理で検証する

イベントの終盤、ある参加者の言葉が印象的でした。

「何かを選ぶとき、条件(年収やメリット)などの論理だけで決めると後悔することが多い。まずは『直感』で選んで、その後に『なぜそれがいいのか』を論理で確認する作業をした方が、納得感のある人生になる気がします。」

これは、「偶然性(直感・P的)」を入り口にして、「計画性(論理・J的)」で補強するという、両者の美しい統合です。

本日の哲学カフェでの気づき

  • 人生の大きな転機は、多くの場合「偶然」によってもたらされる。
  • しかし、その偶然をチャンスに変えるには、日々の行動や知識の蓄積(計画)が必要。
  • 「計画通りにいかないこと」は失敗ではなく、新しい景色を見るためのチケットである。
  • 直感(やりたい!)と論理(どう実現するか)のバランスを大切にする。

「計画性と偶然性」。
相反するように見えるこの2つは、実は自転車の前輪と後輪のように、両方あって初めて私たちの人生を前に進めてくれるものなのかもしれません。

あなたは今、ガチガチの計画の中にいますか? それとも、偶然の風の中にいますか?
たまには立ち止まって、自分の現在地を確認してみるのも良いかもしれませんね。


次回の開催について
私たちの朝活コミュニティでは、こうした「正解のない問い」について、リラックスしながら語り合う場を定期的に設けています。
「自分の考えを言葉にしてみたい」「多様な価値観に触れて視野を広げたい」という方は、ぜひお気軽にご参加ください。